作品を見て回ってみての感想!

このところ、集中的に展覧会に行き考えたことを書いてみようと思っています。 やはり、いくつか回ってみると自分の中で捉え方が違うのだなということに、思いあたります。

それは、良いことでもあり悪いことでもあるような気がしている。捉え方の癖とも考えられるから。

以前より知っていたルーベンスに行き、彼の作品の中でも印象が違うものがあることを知りました。ルーベンスのイタリアでの修行を中心に企画された展覧会ということで、イタリア修行初期の作品を見ました。細部まで描かれている上に、勢いが感じられる印象が強く、この点はイメージ通りでした。

しかし、就業を経てルーベンスが辿った様相は今に見る経営者と言われる立場に置き換えられます。工房を持ち、大量に生産ができるようにしていたこと、得意な分野に特化をして共同制作された作品が展示されていました。知識不足な自分は、一人で晩年まで描いていたと思っていました。

フェルメールでは、フェルメールルームで時期を追うごとに作品の描写がくっきりと浮かび上がってくる様子を見る。これは展示方法のおかげでした。寡作だった意味がよくわかりました。一つの作品に対して、相当の時間と集中力を持って制作されていたのではないかと思う。制作過程に対しての解説はなくあくまで想像です。

数百年前の偉大とされている著名な画家の作品を見ると同時に、の背景を知ると片や商業的にも成功をおさめている画家でした。そして、もう一方は質が高く日常を雰囲気までも表現した画家。比較する訳ではなく、一括りに画家と言っても国や時代によって 生き方はまるで違う。

そこに人生が見えました。

もう亡くなっている、数百年前に完結しているからこそ、そう捉えることができるような気がします。作品1枚の印象よりもその点を思い起こしていることが多かった。現代に通じる要素も感じられた。

展覧会の企画が目的としている部分とはきっと違うと思うのですが、後から振り返ると一番印象に残っているのがそこになります。

一方、VOCA展では、いろいろな表現の仕方を見ました。目を引いた作品は賞を取っている作品でした。作品とタイトルからストーリーが理解できる作品。事前にホームページで作品をみていたからもあったと思いますけれど、どれも本物の方がインパクトがありました。それは作品のサイズや素材から受ける印象の違いだと思います。ストーリーを理解することで、腑に落ちる感覚がとても気持ちが良いものだった。

ある意味でコミュニケーションを図っているような感覚でした。なぜ、そのようになっているのかを観察して推測する。また、タイトルから直感的に解釈ができるのは面白い体験でした。

また、もう一方ではよくわからないけれど、嫌な感じが全くしない作品がある。何だろう?とよく見てみてもわからない。そういうものと割り切るのか?理解するために、また機会を探して足を運んでみるのか?そんなことを考えているのも面白かった。一番は、作者の方に話聞けたらと思ったのもそんな作品でした。

理解ができそうな、でも直感的にはわからなくてと両方が混ざったような作品もあった。そして、シンプルな言葉で表現がしやすい作品もあった。丸がたくさんあって、色が力強くてと。人にどの作品がいいかと問われたら、これだと言ってしまいそうだった。なにやら、とても勢いを感じました。自分が気に入った作品に対してのいくつかの考えが思い描かれて面白かったです。

そして、東京都現代美術館「百年の編み手たち」。今まで行った美術館にはテーマや章ごとに当時の背景や特徴的な事柄を記した場所があります。この企画展も例外なくそれがあるのですが、無視して作品を見ることに重点を置き回りました。

今から100年前に遡ると、関東大震災、そして戦争がありました。その被害を受けた状況を描いた作品がありました。当時の風景を描いている作品もありました。その時を今に伝える資料としての側面も持ち合わせていることを考えたり、海外からの影響を真っ向から受けて制作された作品を見て、文化が影響し合うのは今も変わらないなと思ったりしていました。

日本にとって大きな影響を与えた事柄を伝えていると感じ、粛々とした気持ちになりながら、作品を一つ一つを見ていくと、最近になればなるほど遊びゴゴロを感じる作品もありました。色使いもどんどん今っぽくなっていく。モチーフも表現している内容もとても身近になっていきます。「何が伝えたいのかわからない」なんて言葉自体が必要なく、そのものに込められた意味などないのかもしれない(本当はあるのかもしれない)とまで思ってしまいました。

作品が多いので、よく見ておきたい作品を選んでいるうちに、自分が好きだと思う作品はどういうものなのかがよくわかった。入ってすぐの頃の作品にそれは多く、年代で把握することができたのは収穫だったのでした。

もう一つの収穫は、美術館を空間として楽しむことも観点の一つに加えておきたいと思ったこと。東京都現代美術館が、リニューアルしたことに合わせて「点音(おとだて)」という仕掛けがされていたことからでした。それは、そこまで高尚なことではないものの、そこに立つことで”気づき”を見いだすことが出来るという企画が盛り込まれています。見逃しがちなことを意識的に見る、聞くというきっかけが作られていることで、感じることを促しています。

東京都現代美術館は、高級感がある空間等いうよりも親しみやすさが主だった空間のように思います。アートを見るだけでなく空間を楽しむことや企画展であれば意図を理解すると、もっとその作品に対しての解釈の幅が広がっていくんだと思います。例えば、作品の並べている順番であったり、構成する章の内容であったり。こう言ったことを含めて感性というのであれば、これからは意識的に磨いていきたい。