【書評】仏教と脳科学 

仏教と脳科学 アルボムッレ・スマナサーラ 有田秀穂

仏教と脳科学 アルボムッレ・スマナサーラ 有田秀穂

【仏教と脳科学】 アルボムッレ・スマナサーラ 有田秀穂

2010年に発刊された本です。最近、脳科学関連の本を探して読むようにしています。少し前の本になるのですが、内容はとてもわかりやすく読みやすい本でした。

脳神経の基礎研究に従事された有田氏が、心に平常心を持たせるセロトニン神経に坐禅や瞑想が良い影響を与えることがわかりつつあった頃に研究結果が示すことを仏教ではどう捉えているのかをスマナサーラ長老に質問や説明をしながら対談が進んでいきます。

対談の内容は広く、お釈迦様が見ていた世界について、また現代人が抱えている問題など。仏教にも通ずる瞑想がどのような効果をうむかなど当時(今から10年前)の研究の成果からわかっていたことを話し合っていきます。

有田氏が提唱する「心の三原色」説はとてもわかりやすくどんな内容が効果的なのかも理解しやすく説明されている。

ドーパミン神経→報酬(成績・お金・地位・夢など)で駆動、
        意欲や快情動を発現させる。(赤い心)
 
ノルアドレナリン神経→ストレスで駆動、
           注意・集中や不快な情動(不安・緊張)が発生
           (青い心)
 
セロトニン神経→ドーパミン神経とノルアドレナリン神経     
        を抑制し、平常心を作り出す(緑の心)    p.5

 この中でも、うつ病などに影響を及ぼすのがセロトニン神経でそのセロトニン神経が活性化する方法の一つに坐禅や瞑想に含まれる呼吸法ウォーキングなどがあるとのこと。対談の中で歩行瞑想についての解説もありました。

 

セロトニン神経の活性化に坐禅が良いとする仮説を元に研究を進めた結果、さまざまな運動が良い効果をもたらすことを発見できた。特に、坐禅・瞑想に通じる呼吸法に関しては丹田を意識して息を吐くことに集中することを5分以上続けると脳の動きに変化が出てくることが書かれている。

近年だと、マインドフルネスとして紹介されている瞑想の中にも同様の内容があるので脳に働きかけるという点では科学的根拠はなくとも以前から取り組みが合ったのだなと再認識しました。昔からあるもので良いとされ残っているものにはやはり意味があるのではないかなと思います。

仏教では特に推奨している瞑想は40種類あるそうです。本の序盤に出てくる歩行瞑想(歩きながら、その行為を実況中継する)や人気が高いとされる集中力が高まるサマーディ瞑想、そして智慧を呼ぶヴィパッサナー瞑想などがある。

また、読経もセロトニン神経の活性化に役立つとされている。意味がわからなくてもリズムと声を出すという呼吸法であるところからきているのではとされているそうです。

 

こうしてみると、仏教では解脱、世間とは違う世界を体験するとしている宗教的な側面を持ちながら生活の中で前向きに生きていくことができるように経験に裏付けられた行動が残されていると考えられます。そういった意味で、生活の中に少しエッセンスを取り入れることができると生活に前向きさが出てくるのではないかと思いました。

この本にでてくる仏教用語でもわかりづらいものがあったので、一応リンクを貼っておこうと思います。

 

仏教では人間の衝動を貧(とん)・瞋(じん)・痴(ち)の三つに分けています。                      P.237 

三毒 - Wikipedia

人間の根源的な3つの煩悩についてなんですが、私自身、なかなか無くならないどころが強くなっていることを感じることもあります。欲が原動力になっているとすら感じることもあるのでその点はとても世俗的で問題があるのでしょうが引き締めないといけないとと痛感することも最近続いております。

 

反省できるときにはきちんと反省をして同じ過ちを繰り返さないような努力が必要だと考えています。